『お探し物は図書室まで』の感想・あらすじは?本屋大賞2位 作者は、青山美智子さん

本日は、2021年の本屋大賞(国内小説部門)第2位の『お探し物は図書室まで』という本について書きたいと思います。作者は、青山美智子さんです。

本を読まなくなった時代、書籍が売れない時代と言いますが、本当に世の中には、素敵な作品がたくさんあるんだなあと、本屋大賞の発表のたびに、そう思います。歴代の本屋大賞も凄いですが、今回の本屋大賞も名作ぞろいです。

本屋大賞 2021が発表・結果・ランキング

この『お探し物は図書室まで』は、2021年の本屋大賞の第2位に輝いた作品です。本屋大賞とは、1年間の中で、全国の書店員さんが選ぶ、一番売りたい本の投票で選ばれる小説に与えられる賞です。

2021年の本屋大賞は、『52ヘルツのクジラたち』町田そのこさんの作品が大賞に輝きました。

3位は、伊吹有喜さんの『犬がいた季節』、以下、伊坂幸太郎さんの『逆ソクラテス』(4位)や山本文緒さんの『自転しながら公転する』(5位)など、有名作家さんが名を連ね、話題作では、加藤シゲアキさんの『オルタネート』が8位、宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』が9位に入っています。

前年、2020年に『流浪の月』で本屋大賞を受賞された凪良ゆうさんの『滅びの前のシャングリラ』は、7位ということで、2年連続の受賞には、ならなかったものの、2年連続で、本屋大賞最終候補作品に入るなんて、すごいなあと思います。

また10位の『この本を盗むものは』は、本の街を舞台にした小説とのこと、作者の深緑野分さん自身が書店員の経験もあるということで、読んでみたいなあと思いました。6位の伊予原新さんの『八月の銀の雪』も気になります。

結局、すべて、読みたくなってしまうのが本屋大賞ノミネート作品なんですね。

本の専門家でもあり、普段、本に触れている書店員さんの選んだ作品ということで、本屋大賞に選ばれる作品は、どれもとても面白く、知らなかった本や、普段、読まないジャンルの本など、読書の幅が広がるのも嬉しいですね。




『お探し物は図書室まで』のあらすじ・感想

『お探し物は図書室まで』は、1章から5章まで、5人の主人公による連作短編になっています。

スーパーの婦人服売り場で働く21歳の朋香、中堅の家具メーカーで働く35歳の諒、育休明けに異動になった40歳の元雑誌編集者の夏美、ニートの30歳の浩弥、そして65歳の定年退職をした正雄。老若男女、性別も年齢も置かれている立場もバラバラな人々なのに、もちろん、同じような体験をしているわけでもないのに、なんだか、登場人物たちと同じようなことで、悩んでいるかもしれない、と、つい、読んでいる自分と重ね合わせてしまうような物語です。

それぞれの主人公が持つ、普段の生活におけるどこか満たされない思い。それは、本を読んでいる読者にとっても、まるで、自分の悩みのように共感できる物語です。

そして、すべての物語に登場するのが、町のコミュニティハウスの中にある図書室。そこにいるのは、森永のぞみちゃんという司書の勉強中の女の子と、ベテラン司書の小町さゆりさん。小町さゆりさんは、可愛らしい名前なのですが、とてもとても大きな色白の女の人。そのインパクトのある風貌に、児童書『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』の店主の紅子さんを思い出してしまったほどです。

「何をお探し?」

という名言が、小町さゆりさんから、飛び出します。優しい包み込むような声で、図書室を訪れた人のために、レファレンスをしてくれる小町さゆりさん。

この小町さんが紹介してくれる本が主人公たちの悩みを解決、ひいては、いろいろなことを気づかせて、くれる一冊になります。小町さん作成の本の「付録」も楽しいです。

こんな図書館があったら、行ってみたいなあって、思いますよね。




『お探し物は図書室まで』の作者は、青山美智子さん

『お探し物は図書室まで』の作者は、青山美智子さんです。青山美智子さんは、1970年生まれ。愛知県出身の作家さんです。

小さい頃は、千葉県に育ち、中学で、愛知県・瀬戸市に引っ越しをされたそう。

妹さんと4人家族で、ご両親は、青山さんが大学生になっても、門限やグループ旅行に対してなど、大変、厳しかったそうです。

転機は、大学を卒業した後のオーストラリアへのワーキングホリデーです。ご両親に反対されるかと思ったら、意外にもあっさりと送り出してくれたとか。その後、2年間、オーストラリアで日系の新聞社で記者として、活躍されます。

日本に戻られた後は、雑誌の編集者を経験されたのち、執筆活動に入りました。

2003年に、『ママにハンド・クラップ』という作品で、小学館の第28回『パレットノベル大賞』で佳作を受賞されました。

2007年には、第一回『ショートストーリーなごや』というコンテストで、『街明かりの向こうに』という作品が佳作で入選を果たしています。この作品は、山本亜希監督、そして、なんと奥田瑛二さん、中村優子さんという有名俳優さんの出演で映像化、2009年ショートショートフィルムフェスティバルにて、上映されています。

現在は、神奈川県にて、ご主人と息子さんとの3人暮らしだそうです。

小説家を目指したきっかけは、中学生の時に氷室冴子さんの『シンデレラ迷宮』を読んで、影響を受けたことが大きいそうです。ちなみに本屋大賞の大賞作品の『52ヘルツのクジラたち』の作者、町田そのこさんも、氷室冴子さんの『クララ白書』を読んだことがきっかけと語っています。

氷室冴子さんは、1980年代〜1990年代にかけて、コバルト文庫を代表する作家として、超売れっ子の人気小説家でした。『シンデレラ迷宮』『クララ白書』だけではなく、『なんて素敵にジャパネスク』など、数々の作品を手がけられましたが、2008年に、51歳という若さで、お亡くなりになられています。もし生きておられたら、今頃は、どんな大作家になられ、どんな作品を書かれていたのだろうと思ってしまいます。

その氷室冴子さんを愛読していた世代の青山美智子さん、町田その子さんの活躍は、今後もとても楽しみですね。

 




『ただいま神様当番』は、元気がもらえる小説!

もう一冊、青山美智子さんの小説を紹介したいと思います。

『ただいま神様当番』です。2020年7月に刊行されました。

『ただいま神様当番』は、5編の作品が収録されている短編連作です。OLに小学生、高校生に大学の非常勤講師、零細企業の社長と、それぞれ悩みを抱えている主人公たち。

この物語は、そんな主人公たちの前に、おじいさんの神様が現れるというファンタジーです。

なぜか、主人公たちを「お当番さん」と呼び、自分を楽しませて欲しい、願い事を聞いて欲しいという神様。

第一話目は、印刷会社に勤めるOL、水原咲良が主人公。短大を出て3年。何かいいことないかなあと思いながらも、自分からは、あまり行動を起こさないタイプの女の子です。

咲良は、仲のいい友達のユイが最近、結婚してしまい、少し疎遠になっています。彼氏とも3ヶ月前に別れてしまって、好きなアーティストのライブのチケットにも当たらず、モヤモヤしている毎日。

あまり自分に自信がない咲良は、仲良くなりたいと思った女の子、葵が現れても、SNSの友達申請にさえ、ドキドキしてしまい、躊躇してしまいます。ユイとの間にも誤解が生じて、落ち込んだり。

でも、勇気を出して、一歩を踏み出すことで、葵と仲良くなります。いつも明るく、何気ない日常を楽しむ術を持っている葵。ずっと待ってばかりで、自分から行動しなかった咲良は、いろいろチャレンジするうちに、自信を持ち、いつの間にか、悩みが晴れていく。

すごく大きな出来事や、事件が起こるわけではありませんが、ほんの少し、勇気を出したり、行動することで、変わっていく。

ほっこりとした幸せな気分になれる物語です。

 




青山美智子さんの『木曜日にはココアを』 カバー写真は、ひよっこオープニングのミニチュア写真家 田中達也さん

青山美智子さんのデビュー作は、『木曜日にはココアを』です。

こちらは、青山美智子さんがオーストラリアのシドニーで、2年間を過ごされた経験を糧にされて、執筆された小説です。住宅街の隅、川沿いの桜並木の端にちょこんとある『マーブル・カフェ』を舞台にした12作の連作短編集です。一作一作も長くはないので、とても読みやすいです。

この本に収録されている第2話目の『きまじめな卵焼き』は、2018年の開成中学の入試問題としても出題されています。

この『木曜日にはココアを』という本は、第1回宮崎本大賞と第15回うさぎ屋大賞を受賞しています。宮崎本大賞は、宮崎県内の書店員さんを中心とした賞、うさぎや大賞は、栃木・埼玉・宮城で展開する複合書店のうさぎやさんによる賞です。どちらも本のプロの書店員さんが関わっている賞に選ばれたということで、デビュー作から、素晴らしい作品を書かれているのですね。

その他にも宝島社から、『猫のお告げは樹の下で』『鎌倉うずまき案内所』『ただいま神様当番』が出版されており、どの本も人気が高い作品です。

特に『木曜にはココアを』『猫のお告げは樹の下で』『鎌倉うずまき案内所』は、文庫化もされているので、手に取りやすいですね。まずは、Kindleや電子書籍などで、試し読みをしてみるのも良いかもしれません。

さらに、『猫のお告げは樹の下で』『鎌倉うずまき案内所』の2冊は、韓国語版もでているそうですよ。素敵な作品なので、日本以外の国でも読まれるのは、素晴らしいことですよね。

また、青山美智子の本は、カバー写真がとても素敵なのですが、カバーの装飾を手がけられているのがミニチュア写真家の田中達也さんです。

田中達也さんは、NHK 朝ドラの『ひよっこ』でもオープニング、タイトルバックを手がけられた大人気のミニチュア写真家、見立て作家さんなんです。

『ひよっこ』のオープニングと聞くと、「あっ」と思い出しませんか? 『ひよっこ』の作品の世界観とオープニングの世界観がとてもマッチして、朝から、ほんのりとした温かい気持ちになれたなあと思い出します。

田中達也さんは、他にも、森見登美彦さんの『熱帯』の装画なども手がけられています。また、インスタも大人気なんです。グッズやカレンダー、写真集、人形なども人気があるそうです。そして、『ミニチュアライフ展 2021』〜田中達也 見立ての世界〜も、福井、熊本、大分、愛媛、高知、長野、他にもさまざまな地域、全国各地で、開催されています。

青山美智子さんの日常の中の温かくて、優しい物語と田中達也さんの作品がとても素敵な世界観を作り出していますね。

青山美智子さん、次の新刊が早くも楽しみですね。




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