『そして、バトンは渡された』が文庫・映画化 あらすじ・感想・ネタバレあり 石原さとみが母親役

こんにちは。

2019年に本屋大賞を受賞した瀬尾まいこさん作の『そして、バトンは渡された』。

2018年の2月に出版されてから、文庫化を経て、すでに3年になる作品ではありますが、2021年10月29日に映画化されることになりました。

今回、映画化されると知り、読み返してみたのですが、とても優しくて、温かい気持ちになれる小説です。

本日は、『そして、バトンは渡された』の小説について、さらに、映画化についてを書いてみたいと思います。

『そして、バトンは渡された』のあらすじ・感想 ネタバレあり

『そして、バトンは渡された』の主人公の名前は、森宮優子、17歳。高校3年生です。現在は、森宮優子という名前ですが、生まれた時は、水戸優子、その後が、田中優子、泉ヶ原優子を経て、現在、森宮優子になっているという17年間の人生の中で、4回名前が変わった女の子です。

優子には、父親が三人、母親が二人います。家族の形態は、この17年間で7回も変わりました。現在は、マンションで、森宮さんという「お父さん」にあたる人と、二人で暮らしています。

物語の中で、特にクローズアップされるお父さんと、お母さんが、森宮さんと梨花さんです。

こんなに家族の形態や名前が変わっては、とても大変なんじゃないかと思うのですが、第1章の書き出しは、こんな文章から始まります。

困った。全然不幸ではないのだ。少しでも厄介なことや困難を抱えていればいいのだけど、適当なものは見当たらない。いつものことながら、この状況に申し訳なくなってしまう。

『困った。全然不幸ではないのだ』という、冒頭からとても印象に残る書き出しです。

作者の瀬尾まいこさんは、坊っちゃん文学賞の受賞ですが、夏目漱石の『坊っちゃん』の「親譲りの無鉄砲で子供の頃から損ばかりしている」の書き出しぐらい印象に残りそうな冒頭です。

この文章から、この作品の世界観や主人公のキャラクターが伝わってきますよね。見事な書き出しだと思います。ふわっとした雰囲気なのに、いきなり、心をぎゅっと掴まれるような、そんなパンチのある書き出し。早くもやられたな感を感じさせられ、作品の世界の中に引き込まれていきます。

優子の実の母親は、優子が三歳になる前に事故で亡くなっています。17年間で、4回名前が変わったということが、物語が始まってすぐのところで、明かされるのですが、優子自体は、のほほんと語っているという物語の雰囲気と、深刻な設定が乖離しているのではないかという、もう最初から、作者・瀬尾まいこワールドに引き込まれます。

優子の家族は、何度も変わります。ある時期に、父親や母親であった人とも別れたり、祖父母として、関係があった人とも、大人の事情で、会わなくなったりします。

『そして、バトンは渡された』の小説は、第1章と第2章から、構成されています。第1章が全体の4分の3ぐらい、第2章が残りの4分の1ぐらいです。第1章では、高校生の優子の普通の学校生活と、森宮さんとの生活、そして、今までに至る生い立ちが語られていきます。高校の卒業式で、次に名前を変えるのは、自分自身だと思うところで、第1章は、終わります。

第2章は、それから、数年後経って、優子が大人になってからです。

第2章の最後は、物語の視点が優子から、森宮さんに変わります。森宮さんの優子を見る優しさが伝わってきます。

そして、第1章の始まる前と、第2章の終わった後に、物語をサンドイッチするような形で、森宮さんの語りが入ります。




『そして、バトンは渡された』が映画化 キャストは、永野芽郁さん、田中圭さん、石原さとみさん みぃたん役の稲垣来泉ちゃんがかわいい

そして、何と言っても気になるのが、映画のキャストです。

主人公の森宮優子を演じるのは、永野芽郁さんです。

永野芽郁さんは、ご自分のお母さんから、優子の役は、永野芽郁さんであって欲しいと言われていたようです。

実際の永野芽郁さんは、すでに高校を卒業され、成人されていますが、おそらく映画の中では、大人になった優子のシーンも出てくるので、10代の女優さんではなく、あえて、20代前半の女優さんにされたのかなあと思ったりもします。

優子の、のほほんとした、ほのぼのとした性格であるけれど、実際の芯はしっかりしているというイメージは、永野芽郁さんにピッタリなんじゃないかなと思います。

実際、小説を読んでいると、優子の名言のような、言葉が多いんですよね。映画では、どう表現されるのかが楽しみです。

梨花(石原さとみ)

そして、物語の中で、重要な位置を占める優子のお母さん役の梨花には、石原さとみさん!

このキャスティングが、この映画での一番の驚きだったのではないでしょうか。

梨花は、優子の義理の母親です。優子の実の父親の水戸さんと再婚して、優子のお母さんになりました。

この梨花さん、とても魅力のあるキャラクターで、この映画で、初の母親役をされるという石原さとみさんが「初めてのお母さん役をやりたい!」と思ったのもわかる気がします。

映画では、梨花は、魔性の女!なんて、書かれていますが、小説を読む限りでは、自由奔放で、本当に可愛らしい魅力的な、でも優子への愛情がとても感じられる素敵なお母さんだと思いました。そして、とてもうまく根回しをしているのに、本当は、とても不器用なところもあって、そこにホロリとさせられてしまうんですよね。

小説の中では、優子が梨花と本当の親子に見えないんじゃないかということを、気にしている時に、アパートの大家さんに、「お母さんは、ああ見えて、若作りなんじゃない?」みたいなことを言われていたりするシーンがありました。本当に若くてきれいなお母さんなんです。

なので、梨花は、石原さとみさんぐらいの若くて美しい女優さんが演じるぐらいがちょうどいいのかもしれません。

とにかく、石原さとみさんの初のお母さん役が楽しみです。

森宮さん(田中圭)

37歳。東大卒。梨花の同級生。優子の現在の義理の父。朝からカツ丼を作ったり、餃子をいっぱい作っちゃったり、優子が買っておいたプリンを食べちゃうなど、お茶目なお父さんです。

主演の永野芽郁さんに、「森宮さんがいる!」とまで言われた田中圭さんは、森宮さんのイメージにぴったりだと思います。今までにないイメージの親子像を作りたかったとインタビューで答えられている田中圭さんですが、そのあたりのところも、どう演じられているか、とても楽しみですね。

小説の中では、森宮さん視点の部分が少しあり、森宮さんの優子を見る目の優しさに、じんわりとします。

このメインの3人の他にも、優子の父の水戸秀平に大森南朋さん。梨花や森宮さんよりも、少し年上の設定で、かっこいいお父さんということで、これまたハマっているのではないかと思います。

さらに、優子が小学校を卒業する時に、梨花と再婚して、優子のお父さんになった不動産会社の社長の泉ヶ原茂雄には、市村正親さんがキャスティングされています。この泉ヶ原さんが本当に優しくて、素敵なおじさまなんですよね。こちらも市村さんが演じられると知り、とても楽しみです。

また、優子の同級生で、ピアノが天才的に上手い早瀬賢人。最初に会った時に、スポーツマンで、がっしりした指をしていて、どんなピアノを弾くんだろうと、優子に思わせた早瀬くん。そんな設定も、高校時代に甲子園を目指していたという岡田健史さんに、ぴったりだなあと思います。

映画版では、稲垣来泉ちゃん演じるみぃたんも登場します。名前を聞くだけで、可愛らしさが浮かんできますね。演技派子役として、知られる稲垣来泉ちゃんは、現在10歳。これは、楽しみですね!

実は、映画は、原作とは違うオリジナルストーリーがあるそう。これは、原作ファンの方も楽しみでたまりませんね。




本屋大賞『そして、バトンは渡された』が文庫化 解説は、上白石萌音さん

『そして、バトンは渡された』は、2018年の2月に文藝春秋より、出版されました。

そして、2019年には、なんとあの『本屋大賞』を受賞したのです。それだけでは、ありません。紀伊国屋書店のキノベス!2019やテレビ番組の『王様のブランチ』の中では、BOOK大賞2018を受賞されています。さらには、「二十歳が一番読んだ小説ランキング』では、3位に入っているんですよね。

『本屋大賞』に選ばれたことにより、幅広く読まれるようになったのは、間違いないと思うのですが、中でも『二十歳が一番読んだ小説ランキング』に入っていることには、驚きました。中学や高校の読書感想文の課題にもよく選ばれているようで、本当に幅広い世代から支持されているのですね。また中学受験の入試問題の対策にも使われているようです。

そして、文庫本の解説をされているのが、あの人気女優の上白石萌音さんです。実は、上白石さんは、瀬尾まいこさんが、以前に出版された『戸村飯店青春100連発』を読んで、すっかり瀬尾さんのファンになってしまい、上白石さんがいうところの『瀬尾まいこさん勝手に応援キャンペーン』なるものを始められたということ。そして、それが瀬尾まいこさんの知るところとなり、瀬尾まいこさんから、サイン本をプレゼントされたということです。素敵なお話ですよね。

今回の映画では、上白石萌音さんは、出演されていませんが、今後、瀬尾まいこさんの作品が映像化された時は、上白石萌音さんが演じられることもあるんじゃないでしょうか。上白石萌音さんのふわっとした温かいけれど、どこか芯のしっかりした雰囲気は、瀬尾まいこさんの作品のキャラクターにピッタリだと思います。




『そして、バトンは渡された』の作者は、瀬尾まいこさん

『そして、バトンは渡された』の作者は、瀬尾まいこさんです。1971年、大阪府出身です。長らく中学校の国語の先生をされながら、2011年3月に退職されるまで、小説家と学校の先生の二足の草鞋を履いて、活躍されて来られました。

瀬尾さんの作品には、社会人だけではなく、学生が主人公のこともよくあるんですが、やはり、学校の先生をされていたということもあり、中学生や高校生のキャラクターが生き生きと描かれているなあと感じます。

本当に、登場人物を見つめる目や描き方がとても優しい瀬尾まいこさんの作品。きっと、中学校でも、生徒たちから慕われていたのでしょうね。

瀬尾まいこさんが小説家になったのは、『坊っちゃん文学賞』を受賞されたことがきっかけです。『坊っちゃん文学賞』は、現在は、ショートショート の賞として開催されていますが、当時は、長編部門があり、作家の登竜門のひとつとして、有名な賞でした。

瀬尾まいこさんは、第7回『坊っちゃん文学賞』で『卵の緒』で大賞を受賞されました。

また、その後も映画化にもなった『幸福な食卓』では、第26回『吉川英治文学賞』を受賞され、2008年には、『戸村飯店青春100連発』で坪田譲治文学賞を受賞されています。

それ以外にもたくさんの著作がある大人気の作家さんです。

瀬尾まいこさんの作品の中で、好きなものをあげるようにと言われたら、「全部」と答えてしまうぐらい、どれもハズレなしです。本当にどの作品も全部、おすすめ。最近、出版された『夜明けのすべて』や「その扉をたたく音』も捨てがたい。

でも、歴代の作品の中でもどれがいいかと聞かれたら、個人的には、『図書館の神様』と『戸村飯店100連発』、そして、今回の『そして、バトンは渡された』をあげると思います。

『そして、バトンは渡された』は、文庫本化されて、読みやすくなっていますし、秋の映画の上映までに一読されてみてはいかがでしょうか? 原作と映画の二度、楽しめる作品だと思います。

 




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