大崎梢さんのおすすめは? 文庫『本バスめぐりん。』のあらすじは? 新刊は、『めぐりんと私。』

小説

今回は、小説家・大崎梢さんのおすすめの本について、書きたいと思います。

本屋さんや図書館の棚でもよく見かける大崎梢さんの本。

でも、どれを読んだらいいのだろう? って迷いませんか?

結論は、どの作品も面白いのですが、今回は、特に『本バスめぐりん。』シリーズを中心に紹介していきたいと思います。

『本バスめぐりん。』シリーズ 『めぐりんと私』

大崎梢さんの作品の中でも、人気のある『本バスめぐりん。』シリーズ。

2016年11月に単行本が、2019年10月に文庫本が出版されました。

『本バスめぐりん。』は、5作からなる短編連作集です。『本バスめぐりん』とは、めぐりん号という本を乗せたマイクロバスの移動図書館です。

めぐりん号が走るのは、種川市という架空の町。種川市は、横浜に隣接していて、東京の通勤圏という立地の街です。

本書の冒頭にめぐりん号の巡回マップのイラストが載っているので、それを見ながら読むと、とてもわかりやすいです。

物語の主人公は、照岡久志ことテルさんと、梅園菜緒子ことウメちゃんです。マイクロバスの運転手のテルさんと、図書館司書のウメちゃんのコンビで、市内をぐるりとまわります。

テルさんは、還暦を過ぎた60代半ばという年齢の新人さん。自分の娘よりも年下のウメちゃんの方が、職場では先輩という面白い組み合わせです。

そして、本書の語り手は、ウメちゃんではなく、テルさんなんです。テルさんは、めぐりん号の運転手をしていた同級生が仕事を続けられなくなったため、本バスめぐりんの運転手を引き受けることになりました。

ずっとシステムエンジニアの仕事をしていたテルさんにとっては、本バスの運転手の仕事は、今までとは違う新しい世界でした。運転手と言っても、仕事は運転することだけではありません。本バスめぐりん号が現地に到着すると、返却・貸出用のカウンターを設営したり、パソコンの設置、簡単な返却作業や、利用者への対応もしたりします。

『本バスめぐりん』の可愛らしい表紙から、物語の視点は、てっきり、ウメちゃんの方かと思ったら、テルさんでした。

60代半ばで、こんな風に新しい世界に飛び込んでいくテルさんの姿は、さまざまな世代の人に勇気や元気を与えてくれるのではないかと思います。

今までの仕事ではトラブルを起こすのは機械だった。外側のハードウエアに対し、内部のプログラムをソフトウエアと呼び、プログラミング言語でもって対策を講じてきた。けれど人間は外側もソフトで、内側はもっとソフトのようだ。(中略)数字や記号では通じない。 (『本バスめぐりん』テルさん、ウメちゃん P46)

本バスめぐりんの仕事をしながら、テルさんは、今までの仕事では、出会うことがなかったさまざまな利用者の方々と接することになっていきます。

この部分は、テルさんのキャラクターがとてもよく表れている箇所だと思いました。

また、『本バスめぐりん。』は、『ミステリーズ!』という創元推理文庫で、有名な東京創元社から出版されているミステリーの専門誌に掲載された作品です。

ミステリーというと、「殺人とか、苦手なんです」という方もいらっしゃるかもしれませんが、この話は、ほのぼのとしたコージーミステリーです。

もちろん、移動図書館の話なので、事件も本を絡めた物語になっています。『本バスめぐりん。』の最初の話「テルさん、ウメちゃん」に出てくる本は、アメリカの作家、ドロシー・ギルマンの『ミセス・ポリファックス(おばちゃまはスパイシリーズ)』という作品です。

私は、この「おばちゃまはスパイシリーズ」を読んだことがありませんでしたが、「本バスめぐりん。」の中で、登場人物たちがこの作品について話しているのを読んで、とても読みたくなってきました。

『本バスめぐりん。』の面白さは、移動図書館という特性を生かした話によって、物語の舞台が変わるところ。「テルさん、ウメちゃん」以外の残りの4作もとても読み応えがありますよ。

そして、2021年4月には、シリーズ第2弾として『めぐりんと私。』が出版されました。

『本バスめぐりん。』ファンには、待ちに待った一冊だったのではないでしょうか?

こちらも心温まるハートフルなミステリーで楽しめますよ!




千石社シリーズについて

千石社という出版社を舞台にしたシリーズは、現在、4冊が刊行されています。

シリーズ第1作目は、『プリティが多すぎる』

こちらは、文芸編集が希望なのに、ローティーン向けファッション誌の編集部に異動になった3年目の新見佳孝が主人公です。2018年に日本テレビ系で、ドラマ化もされました。主演は、千葉雄大さんです。

対して、シリーズ2作目の『クローバー・レイン』は、文芸編集者の話です。一生懸命な主人公の思いが伝わってくるような作品です。千石社シリーズは、どの本もとても面白いですが、小説が好きな人は、特にこれが一番好きなんじゃないかなあと思います。

3作目の『スクープのたまご』は、なんと週刊誌の記者の話。この『スクープのたまご』は、週刊文春を取材して、書かれた作品とのことで、あの雑誌の舞台裏が垣間見られるかもしれません。週刊誌の記者が主人公ということで、主人公の立ち位置や描き方も難しかったであろうと思われますが、主人公、日向子を応援したくなる作品です。

そして、4冊目が『彼方のゴールド』 かっこいいこのタイトルは、スポーツ編集部の話です。オリンピックで盛り上がっている今、『彼方のゴールド』を読んでみるのも良いかもしれませんね。『彼方のゴールド』は、2021年7月に文庫化されて、とても手に取りやすくなりました。




成風堂書店事件メモシリーズ

大崎梢さんの作品の中で、人気があるのが、成風堂書店事件メモシリーズです。

こちらは、シリーズ累計が、20万部を突破しているという人気シリーズ。

これぞ、大崎梢さんの書店員経験を生かした書店ミステリーです。

成風堂書店事件メモシリーズは、現時点で4作刊行されています。

『配達あかずきん』

『晩夏に捧ぐ』

『サイン会はいかが?』

『ようこそ授賞式の夕べに』

第1作目は、デビュー作の『配達あかずきん』です。表題作を含む短編5作からなっています。

2作目は、『晩夏に捧ぐ』は、番外編になっています。こちらの作品は、成風堂書店ではない長野県の書店で起こった事件の話です。

第3作目は、『サイン会はいかが?』は、こちらも成風堂書店を舞台にした短編連作集。

そして、4作目が『ようこそ授賞式の夕べに』となっています。書店大賞という本屋大賞ではないかと思われる賞をモチーフにしたミステリー。書店員の最も忙しい一日ということで、章立てが一日の時刻になっています。

この『ようこそ授賞式の夕べに』は、大崎梢さんの別のシリーズ『出版社営業 井辻智紀の業務日誌』とのコラボ作品になっていて、ファンの方には、たまらないですね。




大崎梢さんのプロフィール

大崎梢さんは、東京都の出身です。

2006年に『配達赤ずきん』でデビューされました。

13年間に渡る書店勤務の経験を生かし、書店や出版社、図書館などを題材にした、本を巡るミステリーを多数、手がけられています。

ほのぼのした優しいミステリーを書かれる印象があるのですが、好きな作家は、横溝正史で、中でも『獄門島』や『悪魔の手毬唄』『八つ墓村』などがお好きだとのこと。

代表作は、『配達赤ずきん』をはじめとした「威風堂書店事件メモシリーズ」、「天才探偵Senシリーズ」といった児童書、長編ミステリー『ドアを開けたら』などを手がけられています。

主人公の年齢や性別のさまざまで、小学生から、大人まで、どの世代の人が読んでも面白い作品を多数、書かれています。




大崎梢さんの小説のおすすめランキング

ここで、私が好きな大崎梢さんの作品をランキング形式で書いてみます。

第1位 本バスめぐりん

シリーズの第2作『めぐりんと私』が発売されるなど、大人気の作品です。どんどんシリーズ化していってくれたらいいなあと思います。

第2位 配達あかずきん

私が初めて、読んだ大崎梢さんの本です。

実は、この作品、現時点で、Kindle unlimitedでも読めるので、ちょっと大崎梢さんの小説を読んでみたいなあという方は、この作品から、入るのもおすすめです。きっと大好きになってしまうと思いますよ。

第3位 だいじな本の見つけ方

中学生が主人公ではありますが、大人も、いや、世代を問わず、本が大好きなら、誰もがターゲットかなと思えるような本に対する思いがいっぱい詰まった作品です。

第4位 スノーフレーク

冬の函館を舞台にした青春ミステリーです。主人公の桜井真乃は、高校3年生。

現在、Kindle Unlimitedでも読めるようになっています。この作品は、2011年に桐谷美玲さん主演で映画化もされています。

第5位 『ようこそ授賞式の夕べに』

コラボ作品ということもあり、登場人物がたくさん出てきて、おまけにタイムリミットもあるので、じっくり読みたい作品。複雑だからこそ、面白いです。




大崎梢さんの作品 感想 まとめ

いかがだったでしょうか。

大崎梢さんの作品は、読みやすい短編から、長編のミステリー、さまざまな年代の主人公、と、きっと手に取りやすいものがあると思います。

また、書店や図書館など、いつも訪れるけど、その舞台裏などが描かれていて、とても興味深いのではないかと思います。

さらに本の出版社など、普段、なかなかお目にかかれない場所が舞台なのも気になりますよね。

本が好きな人は、ぜひ、大崎梢さんの作品を作品を手にとってみてください。

 




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