今回は、栗本鋤雲について書きたいと思います。
栗本鋤雲(くりもとじょうん)と読みます。
🔵第18回より登場
<#青天を衝け 登場人物>
幕府の奥医師を免じられて蝦夷(えぞ)地へ左遷されるも、箱館奉行組頭としての功績が認められて目付となり、さらに外国奉行に昇進。幕府の財政問題を解決するため、栄一らがいるパリへと向かう。 pic.twitter.com/pr3oUEk3P1
— 【公式】大河ドラマ「青天を衝け」 (@nhk_seiten) June 12, 2021
栗本鋤雲は、小栗忠順(おぐりただまさ)の盟友。大河ドラマ『青天を衝け』でも、この二人のシーンは、名前が似ているせいか、私の周りでも「どちらがどちらか、ややこしかった」という声がありました。と言う私も、小栗忠順のことは、知っていましたが、栗本鋤雲のことは、あまり知りませんでした。
先日、NHKで放送された『英雄たちの選択』を観ていると、歴史学者の磯田道史さんと作家の木内昇さんが、栗本鋤雲のことを興奮気味に語っておられたのを見て、「栗本鋤雲とは、一体、どんな人物なんだろう?」と、私も俄然興味が湧いてきました。
栗本鋤雲とは、どんな人? 勝海舟が嫌い?
栗本鋤雲は、文政5(1822)年に生まれました。1840年生まれの渋沢栄一よりは、ずいぶん年上ですね。
幕府の御典医をしていた喜多村槐園という人の三男でした。
子供の頃から、優秀で、昌平坂学問所でも成績優秀だったとのことです。
藩医の家に生まれましたが、嘉永元(1948)年に、奥医師を務める栗本家の養子になります。奥医師とは、奥に住んでいる将軍やその家族の診療に携わる医者のことです。
医学館(江戸時代の医学校)に勤め、褒美を与えられるなど、華々しい医師人生を送っていた栗本鋤雲。ちょっとした転機が訪れます。
それは、長崎にある海軍伝習所の観光丸というオランダから贈られた船が、幕府の海軍所で、試乗の希望者を募集したところ、栗本鋤雲も応募したのです。しかし、蘭学をよく思わない幕府の医師に目をつけられてしまい、これが原因で、謹慎、そして、安政5(1858)年に蝦夷地の勤務になり、函館へと赴任することになります。
函館に赴任した後は、遊郭の梅毒駆除のために、函館医学所(現在の函館市立病院)の建設や、七重村薬園の経営、船運開通や飼育事業、養蚕業などの地場産業の振興などにも尽力しました。
その功績を認められ、箱館奉行組頭に任ぜられます。
栗本鋤雲は、のちに江戸に召喚され、外国奉行、勘定奉行を兼任します。そして、大河ドラマ『青天を衝け』では、徳川昭武を追いかけて渡欧します。徳川昭武ら(渋沢栄一も随行)は、パリ万博の参加のために渡欧しており、その後に欧州を見聞中のところでした。
栗本鋤雲は、フランスにも詳しく、函館赴任時代には、フランス駐日公使のロッシュの通訳を勤めていたメルメ・カションとも知り合いだったため、ロッシュとも親交があったようです。栗本鋤雲は、フランスと幕府との借款計画など、日仏の関係のため、奔走します。
そして、大政奉還を経て、維新後は、新政府からの出仕を断り、新政府には入らずに、新聞記者として活躍します。
明治30(1897)年に76歳で死去。死因は、気管支炎でした。
栗本鋤雲の墓は、東京にあります。大塚にある善心寺というお寺です。
盟友だった小栗上野介が非業の死を遂げたのとは違い、明治以降は、これまでとは、別の道で活躍していったというイメージですね。
そんな医師としても、幕府の要人としても、また維新後のジャーナリストとしても、歴史上の重要な人物の栗本鋤雲ですが、大河ドラマに登場するのは、これが初めてのようです。
興味深いのは、勝海舟を嫌いであったと言われていること。晩年に、旧幕臣の会合で、勝海舟に「下がれ!」と怒鳴りつけたと言われていますね。
栗本鋤雲に関する本・小説は? 島崎藤村の『夜明け前」
そんな栗本鋤雲に関する本や小説には、どんなものがあるのでしょうか。
まずは、『栗本鋤雲 大節を堅持した亡国の遺臣 』(ミネルヴァ日本評伝選)小野寺龍太・著があります。
こちらは、312ページもある本で、第1章から、第9章まで、栗本鋤雲の生い立ちから、函館赴任時代、幕臣としての活躍、功績、維新後のジャーナリスト時代におけるまで、栗本鋤雲の生涯が著されており、また地図などの資料にも詳しく、栗本鋤雲のことを知るのには、とても良さそうです。
そして、栗本鋤雲は、島崎藤村の『夜明け前』に、登場する喜多村瑞見のモデルにもなっています。
『夜明け前』は、学校の国語の授業でも習いましたよね。『木曽路はすべて山の中である』という冒頭の書き出し以外は、あまり馴染みはないと思いますが、この機会に一度、読んでみたいものですね。
栗本鋤雲を演じるのは、池内万作さん プロフィールは?
そんな栗本鋤雲を演じるのは、俳優の池内万作さんです。池内さんは、1972年生まれの東京都出身です。
女優の宮本信子さんの長男で、父が映画監督の伊丹十三さん、祖父が映画監督の伊丹万作さん、そして、叔父が作家の大江健三郎さんというすごい一家ですね。池内万作さんは、ご結婚はされており、奥様は、音楽家の本田みちよさんです。
また、同じく俳優の池内博之さんと兄弟ではないか?と間違えられることがあるようですが、全く関係がないようです。
池内万作さんの学歴ですが、高校時代にアメリカの高校へとします。卒業後には、ロンドンにも留学されて、演技や脚本を学ばれたそうです。
帰国後には、映画『フラート』にて、デビューを果たされました。
代表作は、ドラマ『こちら本池上署』シリーズや『相棒』、『金田一少年の事件簿』での明智健悟役、映画『君を忘れない』『犬神家の一族』『犯人に告ぐ』『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の片貝役、など、様々な映画やドラマで活躍されています。
また、池内万作さんは、大河ドラマにも出演されており、過去には、『利家とまつ〜加賀百万石物語〜』では、豊臣秀次を、『龍馬伝』では、三条実美を演じておられます。
そして、NHKの朝ドラ『あぐり』や『どんど晴れ』にも出演されています。
様々な役をこなされて、現在も活躍の場を広げられている池内万作さん。
そんな池内万作さんの栗本鋤雲の出演が今後も楽しみですね。
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